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学生時代に神田のあたりで配達のバイトをしていた。すぐギア抜けするオンボロ軽トラックに積載オーバーで白煙をもうもうと噴出して走っていた。配達は時間との戦いだ。数をこなさないと稼げない。裏道を隅々まで覚え必死に走り回った。 さて皇居である。 千代田区千代田一番 最初地図を幾ら見てもそんな場所が無い?運送屋のオヤジに聞くと皇居だよと教えてくれた「普通の人は入れないから良い経験だろう」との口車に乗せられ配達担当地域になった。しかし千代田区千代田一番 の後に建物名が書いてなく個人名だけしか書いていないのが多いのだ。従三位、従五位下とも書いてない。 僕はやんごとなきお方には全く縁が無いのでさっぱり分からん!当時桔梗門から出入りしていたがそこの守衛、もとい皇宮警察の方に聞くとズバリ教えてくれる。皇宮警察の人は物知りだなあと関心する間も無く、時間に追われた配達小僧は皇居内を急ぐのだがさっぱり道が分からん。なんせ道路標識らしきものが無い。それに100おき位に番所があり皇宮警察の警備に引っかかる。その度に身分証を出し配達の用件を伝える。 配達先は宮内庁とその分室が多かった。やっと目的地に着き品物を渡すと「まあお疲れ様、暑いので冷たいお茶でも・・・」などと誘われる。下手に断るとアカのスパイ容疑で皇宮警察に拉致されるのではないかとご馳走になるが、まあ何事にもおっとりしていてお茶が出てくるまで時間はかかる。世事に疎い殿上人は「まあアルバイトですか?学校はどちら?」などと聞いてくる。ミッション系の学校でマルクス経済学を勉強してます等と本当の事を言えば特高警察に捕まってしまうので「学習院で歴史を・・・」などと嘘をついた。しかし流石に殿上人は歴史や古典には造詣が深い! ボロが出ないうちに早々に引き上げるが帰りにお回しのお菓子などのお土産を貰う事が多かった。 皇国臣民としてかずきちは立派であった。
by aa-kaz
| 2010-06-20 12:48
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